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薬剤師の残業が減らない理由:閉局後に残る仕事を仕組みから分解する

ファーマバンク編集部 / 公開日 / 更新日

閉局しても帰れない。薬歴や発注、翌日の準備が残って、気づけば毎日のように残業になっている。そう感じていても、「要領が悪いから」と自分を責める必要はありません。

残業は、本人の作業の速さよりも、どの仕事が閉局後に回されているか、その仕事を誰がいつ担う設計になっているかによって生まれることがあるからです。このページでは、残業を「感情」ではなく「仕組み」として分解します。

閉局後に残る仕事の内訳を見る

まず、残業の時間に何をしているかを分けてみます。調剤薬局で閉局後に回りやすい仕事には、たとえば次のようなものがあります。

  • 薬歴の入力・確認(詳しくは「薬歴が終わらない」)
  • 在庫の確認、発注、欠品の対応
  • レセプトや調剤報酬に関する作業
  • 閉局作業、翌日の開局準備
  • 本部への報告、店舗の会議の準備

「残業が多い」と一言でいっても、何が残っているかによって原因も対処も変わります。薬歴が中心なら入力の時間と環境の問題、発注や事務が中心なら業務の分担の問題、というように切り分けられます。

残業が生まれる原因を分解する

業務量・時間帯の偏り

  • 処方箋の枚数に対して、日中に処理できる仕事の量が足りていないか
  • 患者さんが集中する時間帯の後に、仕事が閉局後へ持ち越されていないか
  • 在宅や一包化など、時間のかかる業務が重なっていないか

システム・DX

  • 入力や発注の手順が多く、1件あたりに時間がかかっていないか
  • 紙の作業や、同じ内容を複数の場所に入力する二重入力が残っていないか

人員

  • 薬剤師の人数が、処方箋の量や業務に対して足りているか
  • 欠員や休みの日に、応援に入れる体制があるか
  • 一人薬剤師の時間帯は、閉局後に作業が集中していないか

組織・マネジメント

  • 仕事の割り振りが特定の人に偏っていないか
  • 業務量について、上司や管理薬剤師に相談できるか
  • 残業を前提にした仕事の進め方が、習慣になっていないか

待遇

  • 残業の時間が、勤務時間として適切に扱われる環境か

参考:残業に関する制度の基本

厚生労働省の「確かめよう労働条件」には、残業について次のような説明があります(2026年10月3日に確認)。

  • 法定労働時間は、原則として1日8時間・週40時間です(一部の小規模な事業場には特例があります)
  • 法定労働時間を超える時間外労働には、1時間あたりの賃金に25%以上を上乗せした割増賃金が支払われます。深夜(午後10時〜午前5時)の労働も、25%以上の割増です
  • 1か月に60時間を超える時間外労働は、50%以上の割増です
  • 時間外労働をさせるには、会社が労働者の代表などと書面で協定(いわゆる36協定)を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります
  • 時間外労働には上限があり、原則として月45時間・年360時間です(特別な事情がある場合の例外が別に定められています)

実際の扱いは、雇用契約書、就業規則、協定の内容によって確認が必要です。疑問があるときは、都道府県労働局や労働基準監督署に設置されている「総合労働相談コーナー」で、無料・予約不要で相談できます(土日祝日・年末年始は閉庁)。

残業のパターンから、原因を絞り込む

残業の「いつ・誰が・何のために」を見ると、疑う原因が分かれます。

  • 全員が毎日、同じくらい残る

    業務量に対して人員が足りない、または1日の仕事が閉局後に押し出される設計になっています。個人の工夫より、体制の見直しが必要です

  • 自分だけ残る日が多い

    業務が自分に偏っていないか、頼まれやすい役割が固定されていないかを確認します

  • 閉局の直前に来る患者さんの対応で、そのまま残る

    時間帯の構造の問題です。閉局間際の人員配置や、閉局作業の分担を見直せないかを考えます

  • 月末や特定の日だけ多い

    月次の作業が重なる時期の問題です。その時期の作業を前倒しできないか、分担できないかを確認します

  • 残る内容が、毎回ほぼ同じ作業(発注、入力など)

    その作業のやり方・システム・担当の問題です。その作業だけを切り出して見直す価値があります

  • 残業の時間が、記録上は残っていない

    待遇・労務の問題です。記録の取り方と、扱いについての確認が必要です

「残業が多い」という感覚だけでは相談しにくくても、どのパターンかを説明できれば、相談の内容が具体的になります。

今の職場でできること

  1. 残業の内訳を記録する:1〜2週間、何の業務で何分残ったかをメモする。「残業が多い」ではなく「発注に毎日30分」のように具体的に分けて把握する
  2. 日中にできる業務を前に出す:患者さんが少ない時間帯に、発注や薬歴など閉局後に回しがちな仕事を割り当てられないか考える
  3. 業務を分担する:特定の人に集中している業務を、他のスタッフと分けられないか相談する
  4. 記録をもとに上司へ相談する:感覚ではなく、内訳と時間を示して、人員や配置の調整を相談する
  5. 別の店舗への異動を相談する:同じ会社でも、処方箋の量や人員は店舗ごとに異なる

システムの見直しで手間を減らせる領域もありますが、導入すれば必ず残業が減るとは限りません。具体的なサービスの効果は、公式の情報で確認する必要があります(「在庫管理を効率化する方法」「電子薬歴で効率化できること」)。

職場を変えないと改善しにくいこと

  • 人員に対して処方箋の量が常に多く、日中の時間内に収まる設計になっていない
  • 記録を示して相談しても、人員や配置が変わらない状態が続いている
  • 残業を前提にした働き方が、店舗や会社の運営方針になっている

こうした場合は、個人の工夫だけで解決するのが難しいことがあります。職場を変えるかどうかを考える段階ですが、その際は次の職場で同じ問題が起きないかを事前に確認しておくことが大切です。

次の職場で確認したい条件

求人票には「残業月○時間」と書かれていても、実態は分からないことがあります。確認したいのは、時間の数字だけでなく、その背景にある仕組みです。

  • 時間帯ごとの薬剤師の人数と、1日の処方箋枚数
  • 閉局後に残る業務の内訳(薬歴、発注、事務など)
  • 欠員や休みの日の応援体制
  • 薬歴・在庫などの業務を支えるシステム環境

確認項目の詳しい一覧は、「次の薬局で確認する項目」にまとめています。

この悩みに関わる仕事

業務フローの中での位置

原因として考えられる領域

  • A. 業務量処方箋過多・薬歴・在宅・患者対応・一包化
  • C. 人員一人薬剤師・欠員・応援不足・採用不足
  • D. 組織・人間関係管理薬剤師・上司・同僚・経営者・ハラスメント

解決方法を検討する順序

  1. 業務改善:業務の順序・分担・時間配分を見直す。
  2. SaaS/DX:システム導入で効率化できる領域がある場合に検討する。導入すれば必ず改善するとは限らない。
  3. 業務分担:薬剤師・事務スタッフ間などで役割分担を見直す。
  4. 上司・会社への相談:管理薬剤師・エリア担当・本部に状況を伝え、配置や体制の調整を相談する。
  5. 店舗異動:同じ会社内で、体制や業務環境の異なる店舗への異動を検討する。
  6. 勤務形態変更:常勤・パート・勤務日数など、働き方の契約条件を見直す。
  7. 外部相談:社外の相談窓口や第三者に状況を整理してもらう。
  8. 転職:現職での改善が難しい場合の最後の選択肢。次の職場で同じ問題が起きないよう条件を確認する。

次の職場を考えるときに

試しても変わらないときの、選択肢の一つ

残業の原因が、処方箋の量や人員、システムにあるときは、職場を変えて初めて改善することもあります。残業の中身を整理して、確認する条件にしておきましょう。

  1. 1. つらさを、確認する条件に言い換える

    「何が、どの程度つらいのか」を、人員・処方箋の量・システム・業務の分担といった条件にしておきます。確認する項目は次の薬局で確認する項目にまとめています。

  2. 2. 条件を、第三者に相談してみる

    条件を一人で整理し、職場の実際の状況まで調べるのは、負担が大きいこともあります。薬剤師の転職に関する相談を受け付けているサービスに、条件を話してみる方法もあります。転職するかどうかは、条件が整理できてから決めて構いません。

  3. 3. 比べて、判断する

    サービスの内容・条件・料金などは、提供元の公式情報で確認してください。ほかの選択肢(異動、業務の分担の見直し、システムの見直し)とも比べたうえで、決めることが大切です。

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出典