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薬歴が終わらないのは、能力不足とは限らない:原因を仕事の仕組みから分解する

ファーマバンク編集部 / 公開日 / 更新日

薬歴が終わらず、閉局後に残って入力している。そんなとき「自分の作業が遅いからだ」と考えてしまう人は少なくありません。

けれども、薬歴の入力が間に合うかどうかは、本人の速さだけで決まるものではありません。仕事の量、使っているシステム、人員の配置、職場での業務の割り振りといった仕組みが重なって、時間が足りなくなっていることがあります。このページでは、その原因を分けて考えるための視点を整理します。

薬歴が負担になりやすい工程であることは、システムを提供する事業者も課題として挙げています(例:薬歴を書くための残業、在宅時に薬歴を持ち出せないこと。詳しくは「電子薬歴で効率化できること」)。

仕組みを図にすると、次のようになります。

薬歴が残業につながる構造(編集部による整理・概念図)
  1. 患者対応
  2. 次の患者対応
  3. 記録の後回し
  4. 未記載の蓄積
  5. 閉局後の記録
  6. 残業

薬歴が終わらない原因を分解する

「終わらない」という一つの悩みも、原因をたどると別々の領域に分かれます。

業務量(処方箋の量と時間帯の偏り)

  • 1日の処方箋枚数に対して、薬歴に使える時間が足りているか
  • 特定の時間帯に患者さんが集中し、その間は入力に手をつけられないか
  • 一包化や在宅業務など、薬歴以外に時間を取られる業務が重なっていないか

システム(入力のしやすさ)

  • 電子薬歴の画面や入力項目が多く、1件あたりの入力に手間がかかっていないか
  • 入力用の端末が足りず、順番待ちが発生していないか
  • 同じ内容を複数のシステムに入力する二重入力がないか
  • 在宅など、店舗の外で入力しにくい環境になっていないか

人員(誰がどれだけ担っているか)

  • 薬剤師の人数に対して、処方箋の数や業務が多すぎないか
  • 欠員や休みの日に、応援の体制があるか
  • 薬歴を書く時間を確保できる配置になっているか

組織・マネジメント(業務の割り振り)

  • 薬歴以外の業務(在庫、電話、事務作業など)の分担が、特定の人に偏っていないか
  • 業務の優先順位や締め切りについて、相談できる関係があるか

自分の工夫で変えられる部分と、職場全体の判断が必要な部分が混ざっていることに気づくのが、最初の一歩です。

なお、保険調剤では、保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の第8条で、保険薬剤師は調剤を行う場合に、患者の服薬状況及び薬剤服用歴を確認しなければならないと定められています(e-Gov法令検索、2026年10月3日に確認)。いわゆる「薬歴」は、こうした確認に使われる記録の一つです。

薬剤の数で、薬歴にかかる時間は変わる

薬剤の種類数による、薬歴作成の平均所要時間薬歴作成の平均所要時間(1回あたり)回答した薬局767/令和3年度の調査(資料は速報値)
薬剤の種類数による、薬歴作成の平均所要時間
区分値(分)
薬剤が6種類未満の調剤時約3.9分
多剤調剤時(薬剤が6種類以上)約6.3分

測定・集計の範囲:1回あたりの平均所要時間

※ 資料に示された速報値です。確定値とは異なる可能性があります。

※ 調査から数年が経っています。

出典:厚生労働省、中央社会保険医療協議会 総会 総-2「調剤(その2)」32ページ(出典: 薬局の機能に係る実態調査[令和3年度医療課委託調査]速報値)(令和3年10月22日)。原文で確認:2026-10-03

薬剤が6種類以上の調剤では、1回あたりの薬歴作成の平均所要時間は約6.3分で、6種類未満の約3.9分より長くなっていました(速報値)。処方の内容(薬剤の数)によって、薬歴にかかる時間が変わることは、「なぜ終わらないのか」を考える材料になります。

自分の状況から、原因を絞り込む

「薬歴が終わらない」は、残り方によって疑うべき原因が変わります。当てはまるものから見てください。

  • 患者さんの対応が終わるたびに、入力に手をつけられない

    時間帯の偏りや配置の問題を疑います。入力できる「空き時間」がそもそもあるかを確認します

  • 入力の時間は取れるが、1件に時間がかかる

    入力の方法や画面の使いやすさ、項目の多さを疑います。同僚と所要時間を比べると、個人の差かシステムの問題かが分かります

  • 閉局後に、思い出しながら書いている

    対応直後に書けない構造(時間・端末・人数)を疑います。メモの取り方を工夫するだけでも変わることがあります

  • 自分だけが遅れていて、同僚は終わっている

    業務の割り振りが偏っていないか、やり方に差がないかを疑います。能力の問題と決めつける前に、担当する患者さんや業務の内容を並べてみます

  • 全員が残っている

    店舗全体の業務量と人員の問題です。個人の工夫より、体制の相談が必要になります

  • 在宅のある日だけ、特に遅れる

    訪問先や移動中の入力環境と、店舗に戻ってからの時間を疑います(「在宅業務がきついとき」)

どれか1つに決める必要はありません。複数が重なっていることも多いので、一番大きそうなものから順に確認すると、取り組む順序が見えてきます。

今の職場でできること

転職を考える前に、現職で試せることがあります。原因の領域ごとに、次のような対応が考えられます。

  1. 入力の時間を確保する:患者さんが少ない時間帯に薬歴の時間を意識的に割り当てられないか、同僚と相談する
  2. 業務を分担する:薬歴以外の業務を他のスタッフと分け、入力に集中できる時間をつくる
  3. 入力の方法を見直す:定型文の使い方など、いまのシステムの中で手間を減らせる余地がないか確認する
  4. 状況を上司や会社に伝える:残業時間や、どの業務で時間が足りないかを具体的に伝え、人員や配置の調整を相談する
  5. 別の店舗への異動を相談する:同じ会社でも、処方箋の量や人員体制は店舗によって異なる

システムの導入や変更によって効率化できる領域はありますが、導入すれば必ず改善するとは限りません。特定のサービスの機能や効果については、公式の情報で確認する必要があります。

電子薬歴で変えられる領域と、公式情報で確認できる機能の例は、「電子薬歴で効率化できること」にまとめています。

職場を変えないと改善しにくいこと

次のような場合は、個人の工夫や相談だけでは解決しにくいことがあります。

  • 薬剤師の人数に対して、処方箋の量が常に多すぎる
  • 人員の補充や、システムへの投資といった経営判断が必要で、相談しても動きがない
  • 業務の割り振りや人間関係の問題が長く続いていて、改善の見込みが立たない

こうした場合に初めて、職場を変えることが選択肢に入ってきます。ただし、次の職場で同じ問題が起きないよう、事前に確認しておくことが大切です。

次の職場で確認したい条件

次の職場を探す場合は、求人票の条件だけでなく、次の点を確認しておくと、同じ悩みを繰り返しにくくなります。

  • 時間帯ごとの薬剤師の人数と、1日の処方箋枚数
  • 薬歴の入力タイミングと、閉局後に残る入力の実態
  • 電子薬歴など、入力を支えるシステム環境と端末の数
  • 在宅業務や一包化など、薬歴以外の業務の量
  • 欠員や休暇のときの応援体制
  • 管理薬剤師や上司に、業務量の相談がしやすいか

システムの導入状況だけで職場の良し悪しは判断できません。システム、人数、処方箋の量、残業、休暇、管理体制をあわせて確認することが重要です。

確認項目の詳しい一覧は、「次の薬局で確認する項目」にまとめています。残業の背景については「薬剤師の残業が減らない理由」も参考にしてください。

この悩みに関わる仕事

業務フローの中での位置

原因として考えられる領域

  • A. 業務量処方箋過多・薬歴・在宅・患者対応・一包化
  • B. システム/DX電子薬歴・在庫管理・二重入力・紙業務・端末不足
  • C. 人員一人薬剤師・欠員・応援不足・採用不足

解決方法を検討する順序

  1. 業務改善:業務の順序・分担・時間配分を見直す。
  2. SaaS/DX:システム導入で効率化できる領域がある場合に検討する。導入すれば必ず改善するとは限らない。
  3. 業務分担:薬剤師・事務スタッフ間などで役割分担を見直す。
  4. 上司・会社への相談:管理薬剤師・エリア担当・本部に状況を伝え、配置や体制の調整を相談する。
  5. 店舗異動:同じ会社内で、体制や業務環境の異なる店舗への異動を検討する。
  6. 勤務形態変更:常勤・パート・勤務日数など、働き方の契約条件を見直す。
  7. 外部相談:社外の相談窓口や第三者に状況を整理してもらう。
  8. 転職:現職での改善が難しい場合の最後の選択肢。次の職場で同じ問題が起きないよう条件を確認する。

次の職場を考えるときに

試しても変わらないときの、選択肢の一つ

残業の原因が、処方箋の量や人員、システムにあるときは、職場を変えて初めて改善することもあります。残業の中身を整理して、確認する条件にしておきましょう。

  1. 1. つらさを、確認する条件に言い換える

    「何が、どの程度つらいのか」を、人員・処方箋の量・システム・業務の分担といった条件にしておきます。確認する項目は次の薬局で確認する項目にまとめています。

  2. 2. 条件を、第三者に相談してみる

    条件を一人で整理し、職場の実際の状況まで調べるのは、負担が大きいこともあります。薬剤師の転職に関する相談を受け付けているサービスに、条件を話してみる方法もあります。転職するかどうかは、条件が整理できてから決めて構いません。

  3. 3. 比べて、判断する

    サービスの内容・条件・料金などは、提供元の公式情報で確認してください。ほかの選択肢(異動、業務の分担の見直し、システムの見直し)とも比べたうえで、決めることが大切です。

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出典