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調剤薬局の人手不足を、個人の頑張りで埋めない:原因を分解して考える

ファーマバンク編集部 / 公開日 / 更新日

欠員が出たまま補充されず、残ったメンバーで業務を回している。休みの日には応援もなく、残業が当たり前になっている。そんな状態が続くと、「自分がもっと頑張らなければ」と考えてしまいます。

けれども、人手不足は個人の頑張りで解決する性質の問題ではありません。人数、配置、業務の設計、採用と定着の仕組みのどこに原因があるのかを分けて見ると、できることと、できないことが見えてきます。

人手不足で起きていること

  • 欠員が補充されず、一人あたりの業務が増えている
  • 休みや欠勤の日に、代わりに入る人がいない
  • 残業や休日の対応が増えている
  • 新人や中途の教育に、時間を割けない
  • 一人薬剤師の時間帯が生まれている(詳しくは「一人薬剤師がきつい」)
  • 余裕がなく、人が辞めて、さらに人が足りなくなる循環が起きている

「足りない」の中身を分解する

「人が足りない」と感じるとき、実際には次のような違いがあります。

人数そのものが足りない

  • 処方箋の量や業務に対して、薬剤師・事務スタッフの人数が少ない
  • 採用が進まない、または採用してもすぐ辞めてしまう

配置が合っていない

  • 全体の人数は足りていても、患者さんが集中する時間帯に人が少ない
  • 特定の曜日や時間帯に、業務が偏っている

業務の設計に無理がある

  • 本来は他の人でも担える業務が、薬剤師に集中している
  • 手作業が多く、システムなどによる効率化が進んでいない
  • 業務の手順が整理されておらず、新しい人が戦力になるまでに時間がかかる

組織・待遇の問題

  • 人員の補充や配置を、会社に相談できる環境か
  • 待遇や働き方が、定着を妨げていないか

参考:薬剤師数の統計

厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計」によると、2024年12月31日現在、全国の届出薬剤師数は329,045人です。このうち薬局に従事する薬剤師は197,437人(60.0%)で、前回の調査(2022年)の190,735人から、6,702人(3.5%)増えています(2026年10月3日に確認)。

全国の人数が増えていても、個々の薬局が人手不足を感じることはあります。地域、時間帯、業務量(在宅や一包化など)によって、体感は大きく異なるためです。全国の統計は、個別の薬局の人員が足りているかどうかを示すものではありません。自分の職場の状況は、時間帯ごとの人数と業務量で見ていきます。

参考:薬剤師1人あたりの処方箋枚数の分布

薬剤師1人あたりの1日の処方箋受付枚数ごとの薬局数薬剤師1人あたりの処方箋受付枚数(枚/日)の分布394薬局(n=394)/令和2年9月の1か月に応需した処方箋の枚数
薬剤師1人あたりの1日の処方箋受付枚数ごとの薬局数
区分値(薬局)
5枚以下12
6〜10枚23
11〜15枚76
16〜20枚102
21〜25枚68
26〜30枚45
31〜35枚30
36〜40枚17
41〜45枚13
46〜50枚1
51枚以上7
回答した薬局(n)394

回答した薬局(n):394

測定・集計の範囲:1日あたりの枚数は、1か月の合計を22日(同月の平日と土曜半日の和)で割って算出。薬剤師数は、常勤と非常勤の実労働時間などから算出

※ 眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は、薬剤師1人あたりの上限が異なります(資料の注記)。このため、本調査のデータだけでは、各薬局が人員の基準を満たしているかは判断できません。

※ 調査は令和2年のものです。

出典:厚生労働省、薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ 資料2-1「医療安全を前提とした対物業務の効率化について」40ページ(出典: 働き方に関する調査-薬局の施設調査、令和2年度薬剤師の需給動向把握事業)(令和4年3月31日)。原文で確認:2026-10-03

この調査では、薬剤師1人あたりの1日の処方箋受付枚数は、16〜20枚の薬局が最も多く(102薬局)、30枚を超える薬局は68薬局(約17%)でした。同じ資料は、眼科・耳鼻咽喉科・歯科の処方箋は上限が異なるため、このデータだけでは、各薬局が人員の基準を満たしているかは判断できないとしています。自分の職場の枚数が、全体のどのあたりかを知る目安になります。

人手不足のタイプで、原因を絞り込む

「人が足りない」と感じるとき、次のどれに近いかで、取り組みが変わります。

  • 特定の時間帯・曜日だけ足りない

    配置の問題です。シフトの組み方で改善する余地があります

  • 1日を通して、常に余裕がない

    人数そのものの不足、または業務量の過多です。会社に採用や応援を相談する段階です

  • 人が入っても、すぐ辞める

    定着の問題です。教育、待遇、職場の雰囲気、管理体制のどこに原因があるかを見ます

  • 欠員が出ても、補充が決まらない

    採用や人員計画の問題で、個人では動かしにくい領域です

  • 一部の人にだけ、業務が集まっている

    業務の偏りの問題です。分担の見直しで負担が変わることがあります

どのタイプでも、「足りない」と言うだけでは、会社に伝わりにくいことがあります。足りない時間帯、足りない業務、そのとき起きていること(残業、ミスのリスク、休めないこと)を具体的に示せると、相談が進みやすくなります。

今の職場でできること

  1. 不足の中身を具体化する:どの時間帯、どの業務で足りないのかを書き出す。人数の問題か、配置の問題かが分かれる
  2. 業務の優先順位を見直す:閉局後や日中の業務のうち、後回しにできるもの、やめられるものを洗い出す
  3. 業務を分担する:事務スタッフや、他の店舗の応援でカバーできる業務がないか相談する
  4. 業務の手順を整理する:手順書やチェックリストを作ると、新人や応援に入る人の負担が減る
  5. 採用の状況を上司に確認する:補充の予定や、応援の計画があるかを聞いて、見通しを持つ
  6. 店舗異動を相談する:同じ会社でも、人員が比較的整っている店舗があるかもしれない

システムなどの導入で、手間を減らせる領域もあります。ただし、導入すれば人手不足が解消するとは限りません。

職場を変えないと改善しにくいこと

  • 採用や人員の配置は会社の判断で、相談しても補充の見込みが立たない
  • 人が辞める循環が続き、待遇や働き方を含めた抜本的な見直しが進まない
  • 地域や店舗の条件によって、採用そのものが難しい状況が続いている

こうした場合は、個人の努力では限界があります。次の職場を考えるときは、人手不足が一時的なものか、構造的なものかを確認することが大切です。

次の職場で確認したい条件

  • 時間帯ごとの薬剤師の人数と、1日の処方箋の枚数
  • 直近の退職や入れ替わりの状況
  • 欠員が出たときの補充の方針と、応援の体制
  • 同じ店舗の求人が頻繁に出ていないか。出ている場合、その背景
  • 新人や中途への教育の体制

確認項目の詳しい一覧は、「次の薬局で確認する項目」にまとめています。残業の面からは「薬剤師の残業が減らない理由」も参考にしてください。

「薬局の人員体制を見る方法」では、求人票の数字から人員体制を読み解く方法をまとめています。

業務フローの中での位置

原因として考えられる領域

  • C. 人員一人薬剤師・欠員・応援不足・採用不足

解決方法を検討する順序

  1. 業務改善:業務の順序・分担・時間配分を見直す。
  2. SaaS/DX:システム導入で効率化できる領域がある場合に検討する。導入すれば必ず改善するとは限らない。
  3. 業務分担:薬剤師・事務スタッフ間などで役割分担を見直す。
  4. 上司・会社への相談:管理薬剤師・エリア担当・本部に状況を伝え、配置や体制の調整を相談する。
  5. 店舗異動:同じ会社内で、体制や業務環境の異なる店舗への異動を検討する。
  6. 勤務形態変更:常勤・パート・勤務日数など、働き方の契約条件を見直す。
  7. 外部相談:社外の相談窓口や第三者に状況を整理してもらう。
  8. 転職:現職での改善が難しい場合の最後の選択肢。次の職場で同じ問題が起きないよう条件を確認する。

次の職場を考えるときに

試しても変わらないときの、選択肢の一つ

人員や体制の問題は、個人の努力だけでは変えにくいことがあります。譲れない条件を整理してから、相談する方法もあります。

  1. 1. つらさを、確認する条件に言い換える

    「何が、どの程度つらいのか」を、人員・処方箋の量・システム・業務の分担といった条件にしておきます。確認する項目は次の薬局で確認する項目にまとめています。

  2. 2. 条件を、第三者に相談してみる

    条件を一人で整理し、職場の実際の状況まで調べるのは、負担が大きいこともあります。薬剤師の転職に関する相談を受け付けているサービスに、条件を話してみる方法もあります。転職するかどうかは、条件が整理できてから決めて構いません。

  3. 3. 比べて、判断する

    サービスの内容・条件・料金などは、提供元の公式情報で確認してください。ほかの選択肢(異動、業務の分担の見直し、システムの見直し)とも比べたうえで、決めることが大切です。

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出典